基本の「キ」
「地縄張り」の役割と知っておくべきポイント
入念な打ち合わせを何回も繰り返し、やっと決まった間取りや外観。
無事に建築確認申請も許可されホッとするところですが、ここからがいよいよ家づくりの本格スタートです。
実際に建築工事が始まる前に行う祭事として「地鎮祭」が有名ですが、地鎮祭を行う前の「地縄張り」をご存知ですか?
「地縄張り」とは建築予定地に縄を張り、設計図面通りに建物の配置を決めていく作業のことです。
建物の位置を決定する大切な作業になりますので、「地縄張り」の役割や、参加時の注意事項について解説させて頂きます。
1.家づくりの起点「地縄張り」
「地縄張り(じなわばり)」とは、設計図面上の配置計画を、現地の敷地に縄を張って配置の確認を行う大切な作業です。
建物の位置を図面だけではなく、実際の土地を使って把握し、確認する目的で行います。
立体でないため少しわかりにくいかも知れませんが、建物の場所や境界との距離、その他の配置物を確認します。
一般的には、地鎮祭を行う前に地縄張りを行うケースが多いようです。
地縄張りは工事を行う工務店などの施工業者が行います。
基準となる点に杭を打ち、正しく距離を測りながら縄を張っていきます。
お施主様の役目は、張られた地縄の位置の確認や、隣地との距離、駐車場等のスペースの確認です。
原則として図面通りに地縄が張られますが、建物の配置を最終確認する大切な工程で、現地での確認が必要となります。
地縄張りのあと、遣り方(やりかた)、地盤改良工事、基礎工事へと進んで行きます。
2.地縄張りとはどんな作業なのか
実際の地縄張りがどのような作業なのかを紹介します。
昔は本物の「縄」を利用していたそうですが、近年では代わりにロープやビニール紐を使うことが一般的です。
確定した設計図書を確認しながら、正確に縄やビニール紐で建物の輪郭を地面に張り、配置を示していきます。
この地縄張りのときに、現地でベンチマーク(BM)と呼ばれる高さの基準点を決定します。
現場や周囲の条件にもよりますが、道路のマンホールや側溝の天端などをベンチマークとすることが一般的です。
BMを基準として、建物設計の基準となるGL(グランドレベル)を決定します。
3.敷地や家が狭く感じる
「想像していたよりも、意外に敷地や家が狭い」。
「地縄張り」のときに、多くのお施主様は口を揃えるようにこのようにいわれます。
安心して下さい。
土地だけを見ると「狭い」と感じるのはごく一般的な見解です。
人間の目は立体を捉えるようにできています。
このために平面的な情報しかない場合、実際より小さく認識してしまう性質があります。
地縄は地面に縄を張っただけの平面的情報なので、図面通りの配置でも想像しているイメージより小さく感じてしまいがちです。
柱や壁といった「高さ」や「体積」の情報がなく、「面積」だけを受け取るために想像しているよりも小さく感じることを事前に知っておきましょう。
錯覚から感じる狭さを解消する方法として、可能であれば駐車予定スペースに車を置いてみましょう。
「対比するもの」の有無で感じ方が大きく異なります。
人間は対比するものがあれば、大きさを自然と比較します。
何もない土地に縄が張ってあるだけの状態では、建物の大きさを正しく比較できません。
自分の車を駐車予定スペースに停めるだけで対比対象ができるので、感覚的に大きさのイメージをつかみやすくなります。
4.「イメージと違う」とならないために
家だけでなく境界までの距離も、図面上の寸法よりも狭く感じるかもしれません。
実際に家が完成したあとに「イメージと違う」とならないためにも、地縄張りのときにさらに確認しておくべきポイントを紹介します。
広々とした大きな土地なら問題は少ないかも知れませんが、隣地との距離が近い場合は隣家とのプライバシーの問題も確認しておくべき事項です。
地縄張りのときに建物の位置だけでなく、部屋や窓の位置も入念に確認しておきましょう。
プライバシーが気になる部屋などは特に注意が必要です。
窓の先にはなにが見えるかを確認しておくとよいでしょう。
建物の配置計画だけでなく、隣接する周囲の家との位置関係や部屋の状況もしっかり確認しておいてください。
そしてもう一点大切なことが「方位」です。
日射の具合や周囲の建築物による影の落ち方等に問題がないかを確認しておきましょう。
その他のチェック項目として、外構計画も確認しておくべきです。
駐車スペース、駐輪場、庭との関係性や生活の動線をしっかりイメージしておくと良いでしょう。
5.まとめ
地縄張りを行う理由と大切さをご理解頂けましたか?
特別に難しい作業を行うものではありませんが、地縄張りは設計内容をより正確に把握する役割を担っています。
配置図や平面図を用意して現地でしっかりと確認を取るようにしましょう。
当然ですが施工業者も立ち会いますので、気になる点や質問はその場ですぐに投げかけましょう。