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切磋琢磨

2021.04.26
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なぜ家づくりには設計図面が必要なのか

 

「家を建てよう!」と決意したら次に必要になるのが、思い浮かぶイメージを具現化する作業です。

「こんな部屋が欲しい」「こんなキッチンが良い」「こんなデザインが素敵」と、夢や想像は膨らむばかりですが、無計画に思いつくままに家をつくることはできません。

家族の中でも用途やイメージについて意見が分かれる場合が往々にしてあります。

 

さらに家づくりは、法律を遵守し、各種の性能を適切なものにする必要があります。

もちろん、予算が無限にあるご家庭は存在しませんので、お財布事情との相談もあります。

 

理想の家を手に入れるためには、最初にしっかりとした「図面」をつくることが重要です。

家づくりに必要になる「設計図面」について紹介させて頂きますので、役割や種類、そして見方をしっかり理解して、ステキな家の完成を目指しましょう。

1. 家づくりには設計図面が必要

家は生涯の買い物の中でも、非常に高価なものです。

既に完成した家を購入する場合(建売住宅)は現物を見ることができますが、これから家を建てる場合にはイメージや計画を具体的にまとめていかなければなりません。

ぼんやりしたイメージのまま家づくりを始めてしまうと、様々な問題が生じます。予算オーバー、敷地内に収まらない、法律に違反する、必要な設備が設置できない等々、問題が起こる度に後戻り作業が必要になってしまいます。

予算や工事期間をしっかり守り、作業の後戻りやムダをなくし、必要な場所に必要な設備を設置するためにも、最初にしっかりとした「設計図面」を作成することが極めて重要です。

建築主のイメージを設計者や施工者にしっかりと伝え、具現化するためにも設計図面は欠かすことができない重要な伝達ツールです。
基本設計から実施設計、そして施工へ意思のバトンを繋いでいくのが「設計図面」の大きな役割の一つです。

 

2. 設計図面の大切な役割とは

建築主のイメージや計画を設計者や施工者に伝えるだけが設計図面の役割ではありません。

平面的な計画だけでなく、あらゆる角度から完成予定の建物の整合性を確認するためにも設計図面は大切な役割を持ちます。

例えば、キッチンや洗面台が設置される位置には、予め給排水管や電源が必要になります。また、ピアノなどの重量物を置く部屋の床は補強しておかなければなりません。

設計図面とは、完成した状態から逆算して、事前に何が必要であるのかを確認するためのチェックツールとしても利用されます。どんな家をつくるのか、共通認識を持つための「ルール」とも言えるでしょう。

 

また、工事の予算を算出する際には、設計図面を元にして必要になる材料を拾い出して行います。

工事日程も図面を元に作成されますので、設計図面が工事の精度や工程管理に大きな影響を与えます。

「段取り八分の仕事二分」と言われますが、設計図面はまさに段取りの部分であり、設計図面がしっかり作成できるほど腕の良い施工者といっても過言ではありません。

 

また、最近ではすっかり主流となりましたが、図面はCAD(キャド)と言う作図システムを使って作ります。昔は手書きの図面がメインでしたが、CADの登場により図面の作成や修正が効率化し、中には3次元を使って建物や室内を確認できる仕組みも登場しています。

 

3. 確認申請用図面と設計図面の違い

家づくりに利用する図面は「設計図面」だけではありません。

家づくりを行うためには、関連する様々の法律に適合していなければいけません。

建物は人命や健康を守り、財産を保護し、周辺の住環境も良好に保たれる必要があります。

 

これから建てようと検討する家が法令を遵守し、しっかりと条件に適合しているかを確認するのが建築基準法に定められている「建築確認申請」です。

建築基準法に定められている「建築確認申請が必要な建物」として4種類の建物があります。

【一号建築物】
特殊建築物(学校や大型の施設等)と呼ばれる建物
【二号建築物】
木造3階建ての住宅や延べ面積500㎡を超えるもの
【三号建築物】
木造以外で階数2以上または延べ面積200㎡を超える建築物
【四号建築物】
上記一号から三号の建築物に該当しない建物で、都市計画区域内の建物

一般的な住宅の場合、この「四号建築物」に該当するので建築確認申請が必要になります。

建築確認申請に利用される図面は、設計図面を元に作成されますが、あくまでも目的が「法律の適合」になりますので、記載する内容や表現が異なります。

建築確認申請の図面は2部作成されて「正本」が提出先(役所)に、「副本」が建築主に渡されますので、大切に保管しておきましょう。将来のリフォーム工事や増改築を行う場合に必要になる大切な図面です。

 

4. どんな種類の図面があるのか?

設計図面には多くの種類があります。

図面の名称を全て覚える必要はありませんが、代表的な図面の種類として以下のようなものがあります。

仕様書、配置図、平面図、平面詳細図、断面図、立面図、展開図、電気図、家具図、造園計画図、境界承認図、構造図(基礎、土台、梁、小屋、野地)…等、その他にも色々とあります。

種類はたくさんありますが、設計図面は大きく分けると3つに分類されます。

「意匠図」「構造図」「設備図」です。

 

「意匠図」とは、建物の形や間取り、そしてデザインなどを伝えることを主な目的とした図面です。平面図、断面図、立面図、矩計図(かなばかりず)、天井伏図、展開図などがあります。

この中でも絶対に抑えておくべきは「配置図」「平面図」「立面図」「展開図」です。

間取りや仕上がりのイメージに直結する設計図面なので、見る目をしっかり養っておきましょう。

 

「構造図」は家の構造部材を表した図面です。

柱や梁などの骨組みになる部材や、接合部の形式などを記載した図面です。
床伏図、軸組図、配筋詳細図、基礎伏図、屋根伏図などがありますが、建築のプロでなければ判断が難しい図面になるので、見方よりも図面の有無をしっかりと確認しておきましょう。

 

「設備図」は、電気設備図、給排水衛生設備図、空調換気設備図などがあります。

家づくりで重点的に確認する必要があるのは、コンセントや照明の位置と種類、配水管やガスの位置、冷暖房器具や換気などの位置です。

専門的な記号や表現がわからなくても、設置位置や高さは必ず確認しておきましょう。

 

5. 知っておくべき基本的な図面の見方

図面に使われる「線」にはいくつかの種類があります。

この線の種類には用途や決まりがあり、これを知るだけでもプロ目線に一歩近づきます。

 

製図に用いる線は基本的に「太い線は断面」「細い線は奥に見えるもの」を表しています。
また「破線は見えない部分」等を表します。

 

平面図で例えると、壁や柱やサッシは太い線で描かれます。

家具やキッチン等の住宅設備、床の点検口は細い線で描かれます。

これは断面図や平面詳細図と言った別の図面でも同じルールです。

 

また、図面には「図面記号」と呼ばれる様々な記号や表記があります。

方位、扉の種類、階段の上り方向、窓や開口部を表す「平面表示記号」と、「材料構造表示記号」と言うものがあります。

「材料構造表示記号」は使用材料や構造を表す記号で、コンクリートの断面は「3本斜線」、木造の柱や梁には「バツマーク(構造材)」や「細かい斜め線(化粧材)」が使われます。

基本的な設計図面の見方を抑えておくだけでも、図面の閲覧が楽しくなります。

 

6.まとめ

設計図面には様々な役割と用途があり、家づくりを進めていくためには必要不可欠なツールです。

また、設計図面が完成したあとも、実際に家を建てていく途中で建築主の都合や予算の関係で計画変更になる場合があります。こんなときも設計図面が充実しているほど、変更箇所に関連する工事や材料がすぐに把握でき、早急な対処が可能になります。

 

たくさんの設計図面を作成する作業は大変ですが、後戻り工事やロスを最大限に削減するために必要なものです。建築主の思い描く夢をしっかりと現実化させるためにも、設計図面は多くの種類があるほど有益な結果を招きます。

スムーズで確実な意思疎通を行うために、「設計図面」が在るということを認識しておきましょう。