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切磋琢磨

2021.06.07
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なぜ住宅は木造が多いのか

日本には、現存する木造建築で最古と言われる「法隆寺」があります。

日本は古くから木材資源が豊富に存在し、寺社仏閣の建立に伴って木造建築技術が飛躍的に発展しました。

その技術は一般住宅にも応用され、根強い木造住宅人気は現代でも衰えることがありません。

現在の日本国内における住宅はほとんど木造であり、日本の一戸建て住宅の約9割を木造が占めています。
(参照:「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計結果」/総務省統計局)

そこで今回は、木造住宅の持つメリットや、なぜ木造が優れているのかについて解説します。

これから家づくりを始める方は、「木の家」の特性を理解しておくと良いでしょう。

神ヶ谷の家/設計施工:扇建築工房

 

1.なぜ住宅には木造が多いのか?

「木造」とはその名が表すとおり、主要な構造部分に「木」を利用した建築方法です。

木造以外にもマンションなどに採用されるRC造(鉄筋コンクリート造)や高層ビルの鉄骨造がありますが、一般住宅の分野では「木造」が多く採用されています。

RC造や鉄骨造でも平屋、2階建て、3階建ての「低層建築物」を建築することが可能ですが、住宅を中心とした低層建築物は木造が圧倒的なシェアを持っています。

 

世界には「石の家」や「土の家」などさまざまな住宅形式がありますが、日本は昔から木の家が中心です。

それには、日本の気候風土が関係しています

日本は諸外国に比べて特殊な気象条件を有しています。

四季がハッキリと別れ、寒暖差が激しく、高温多湿の気候があります。

めまぐるしく変わる気象条件は家にとって過酷なものであり、特に高温多湿の条件は無視することができません。

そのため、高い調湿性を持つ木は住宅の材料として重宝されています

 

 

2.木造の大きなメリットについて

木の家のメリットは調湿性だけではありません。

木材がコンクリートや鉄と異なり、住宅を中心とした低層建築物に多く採用される理由は「軽さ」と「強度」です。

一部の木材を除き、ほとんどの木は水に浮くほど軽い材料です。

難しい言葉でいうと木は比重が軽く、コンクリートや鉄に比べると「軽くて強度が高い」という特性があります。

 

軽い材料で家をつくると、建築コストを大幅に抑えることができます。

もちろん使用する木材の種類によっては高価な材料もありますが、木造は建物の総重量が軽くなるため、基礎工事が大幅に削減され建築コストが低くなります。

 

また、木造は設計の自由度が非常に高く、将来のリフォームもしやすい構造です。

将来「1部屋だけ増築する」「和室を洋室に改修する」といったリフォーム工事にも柔軟に対応しやすいメリットがあります。

 

さらに意外に思われるかも知れませんが、実は木造は耐火性能にも優れています

材料(木や鉄)の中の熱の移動のしやすさを「熱伝導率」といいますが、木造の骨組みに使われる太い木は熱伝導率が低く、木の内部まで燃えるには時間がかかります。

しかし鉄の場合は熱伝導率が非常に早く、燃え始めると温度が急速に上がり、骨組みの鉄骨が熱に耐えきれず折れ曲がってしまいます。

 

加えて「木材」には、「木目の美しさ」や「五感で感じる心地よさ」といった自然素材ならではの特徴があります。

森町の家/設計施工:扇建築工房

 

 

3.木材の種類と使い分け

家づくりに利用される木の種類はさまざまですが、利用頻度の高い「木材」の種類をいくつかみてみましょう。

木材の用途は、「構造材」と「造作材」に分かれます。

構造材は強度や耐久性が求められ、造作材は美しさや汎用性、加工性などが求められます。

 

家づくりに利用される木材の種類は、「杉」「桧」「松」「桧葉」などが有名です。

内部の仕上げや家具などの造作材には「ブナ」「アカマツ」「ミズナラ」などもよく利用されます。

 

また木材には、「無垢材(むくざい)」と、ひき割った板材を接着剤で貼り合わせた「集成材」があります。

代表的な木材の特徴を挙げてみましょう。

 

【杉(すぎ)】
流通数が多く、建築用材に適した木材として認知されています。
桧とはまた違った独特の香りを持ち、杉樽の日本酒も人気です。
軽くて断熱性に非常に優れた材料で、フローリング材に利用した場合は冬場でも裸足で歩けるほどの温かさを持っています。【桧(ひのき)】
水に強く狂いが少ない木材で、土台や柱などの構造材に適しています。
美しい木目に加え防虫効果が高く、造作材としても頻繁に利用されます。

【松(まつ)】
松にはいくつかの種類があります。
国産の松を「地松(じまつ)」といい、さらに「黒松」「赤松」に分類されます。
外国産の米松(ベイマツ)やパイン材と呼ばれる北米産の松もあります。
「硬さ」と「艶(つや)」が特徴的で、構造材の梁によく使われます。
松のフローリングは経年による艶の美しさが特徴的です。

【桧葉(ひば)】
湿気や水に強く、土台などの構造材に適しています。
比較的安価で、菌に対する耐性が強い特徴を持ちます。

 

その他にも「栗(くり)」「欅(けやき)」「桜」など、たくさんの木材が家づくりには利用されます。

 

 

4.進化する木造建築材

一般的な住宅から少し話が逸れますが、実は「木造」はビルまで作れるスゴイ建築方法です。

ビルといっても3階建てや4階建てではなく、10階以上の高層ビルです。

1990年代にドイツで開発された「Cross Laminated Timber(クロス・ラミネイティド・ティンバー)」、通称CLTという材料が木造の常識を一変させました。

建築業界を大きく変える夢の新素材として注目されています。

これは集成材とは少し異なり、ひき板をベニヤ板のように交差させて貼り合わせた特殊な大きな木の板です。実際は、板というよりも、木の塊のような分厚い材料です。

CLTは変形しにくく、その強度はコンクリートにも匹敵します。

さらに木材の特徴である高い断熱性と吸湿性を持ち、耐震性、遮音性、耐火性も併せ持っています。

すでに海外では戸建住宅や集合住宅、さらに大規模な商業施設や高層ビルにも用いられています。

実は日本でも実用化が進みつつあり、東京オリンピックの選手村へも利用されています。

 

 

5.まとめ

「木造住宅」といえば、昔は「安い」「火事に弱い」「寒い」というイメージがあったかも知れません。

ところが、より快適で安全な暮らしを求めて、木造住宅は大きな進化を遂げています。

耐震性、防火性、気密性や断熱性は少し前の木造住宅とは比べ物にならないほど性能が向上しています。

高温多湿な日本の気候にマッチした木造は、健康的に暮らせる住宅に適した工法です。

もちろん、RC造や鉄骨造にもそれぞれのメリットがありますが、木材が持つ自然素材ならではの特徴は、他では得られないものです。

改めて木材の魅力に目を向けてみるのもいいかもしれません。