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切磋琢磨

2021.05.21
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屋根の役割とは

どんな大きな建物にも、住宅のような小規模な建物にも、必ず「屋根」があります。

普段近くで目にする機会が少ない屋根ですが、実は家の中でもっとも過酷な条件に耐えながら、建物をしっかり守ってくれている存在が「屋根」です。

屋根がなければ雨が降る度に建物は水浸しになり、安心して使うことができません。

特にこれから家づくりを検討されている方は、屋根の構造や仕組みについて要点を学んでおくと良いでしょう。

屋根が担う大切な役割や形状の違い、地震に強い屋根の基準、そして雨漏りを防ぐためのポイントを紹介します。

 

 

1.屋根が担う大切な役割とは

「屋根の役割」といわれて、何が思い浮かぶでしょうか。

「雨風に耐える」というイメージが強いかも知れませんが、屋根は様々な役割を担っています。

住宅の場合、毎日当たり前のように屋根の下で暮らしているにも関わらず、普段は目にする機会が少ないために、その役割や大切さに気づかないのが「屋根」という部位です。

しかし、「屋根」は快適な暮らしと安全に直結した重要な部分で、家づくりで疎かにしてはいけないところです。普段目が届きにくい部分だからこそ、耐久性にこだわりを持ち、メンテナンスを最大限まで減らす工夫が必要になります。

まずは、屋根が担う大切な役割についてしっかり認識しておきましょう。

 

日常的に最も頻度が高い役割が、「住まいを雨から守る」ことです。屋根は住む人を雨から守ってくれる「大きな傘」のようなものです。

統計上、日本では4日に一度の割合で雨が降るそうです。

日本の住宅は木造が多く、木材は水分や湿気によって腐朽・劣化する弱点があるため、雨から家を守ることは非常に重要な役割を持ちます。

 

また、屋根は「耐震性」にも大きな影響を与えます。

軽い屋根材を使うことにより、地震による揺れの影響を受けにくくなります。

 

その他に、屋根は火事のときの「防火性」も担います。

いくら雨や地震に強くても、燃えやすい屋根では機能を果たしているとはいえません。

さらに、温度調整の機能や防音性、防塵性、遮光性、断熱性、吸熱性といった多くの役割を持っています。

 

 

2.地震に強い屋根

私達が暮らすこの日本は、世界でも有数の自然災害大国です。

特に地震や台風といった災害リスクは、諸外国と比較しても驚くほどの差があります。

大災害を招いた東日本大震災から10年、東海地震・南海地震等が懸念されるなか、防災には大きな関心と注意が向けられています。

これは大きな建物だけでなく、一般の戸建住宅にも関わる重要な問題です。

 

過去の大きな地震から割り出されたデータによると、耐震性能を大きく左右するのが「屋根の重量」であることが分かりました。

建物は重ければ重いほど揺れやすくなり、逆に軽くなるほど耐震性が良くなるといわれています。

単純に屋根を軽くすれば耐震性能が飛躍的に良くなるというわけではありませんが、建物全体の重量を軽減するために屋根材をできるだけ軽くすることは大きな意味を持ちます。

 

 

3.屋根の形状と種類

様々な役割を持つ「屋根」ですが、使用する材料や形状によって屋根は表情や機能が大きく変化します。

まずは、「形状」という視点から屋根を見てみましょう。

日本の住宅の屋根に使われている種類で、代表的なものは以下の4種類です。

 

●切妻(きりづま)

日本の住宅で多く採用されている山型の屋根です。

折り紙を真ん中で折ったような形状です。

構造が単純なため、建築コストが安く、雨漏りにも強いという特徴があります。

 

●寄棟(よせむね)

寄棟は、切妻に次いで日本ではよく利用される屋根の形状です。

外周部がすべて軒先になるのが特徴で、見た目は切妻より柔らかい印象になります。

 

●片流れ(かたながれ)

一方向にのみ傾斜がついた形状の屋根です。

非常にシンプルな形で、他の屋根形状に比べ、施工の労力がかかりません。

 

●入母屋(いりもや)

日本の伝統的な屋根の形なので、純日本家屋に多く採用されている屋根形状です。

上部が「切妻」で、下部は寄棟という複雑な屋根形状です。

お城や神社、仏閣などで多く見られる屋根で、切妻や寄棟よりも重厚感が感じられる屋根形状です。

 

出典:『建築知識 2011年2月号』(発行:エクスナレッジ)

 

 

4.屋根の材料はどんなものがある?

屋根の材料といえば「瓦(かわら)」を思い浮かべる方が多いかもしれません。

板・茅 (かや) ・瓦 などで屋根を覆うこと「葺く(ふく)」といい、屋根材料を「屋根葺材(やねふきざい)」と呼びます。

屋根には色々な屋根葺材が使われていますが、代表的な屋根の材料をいくつか紹介します。

 

●瓦

古くから幅広く根強い支持を受けている、屋根葺材の代名詞的存在です。

瓦は粘土を硬く焼き上げてつくられているため耐久性に優れ、50年以上という長寿命を誇ります。

一般住宅に使われるようになったのは江戸時代中期で、火事による延焼を防ぐための屋根葺材として普及しました。

 

●化粧スレート(繊維強化セメント板)

本来のスレート(通称・天然スレート)は粘板岩を薄く成形した建築材ですが、価格が高く日本ではあまり普及していません。

セメントに繊維素材を混ぜ、強化成形した薄い板状の建築材を化粧スレートといい、一般的に普及しているのはこちらのスレート材になります。

安価で入手することができ、薄く軽いので建物への負担を軽減することができます。

形状や色のバリエーションが豊富で、どのような屋根にもマッチする汎用性に優れた屋根葺材です。

瓦に比べると耐久性で劣り、表面の塗装など定期的なメンテナンスが必要になります。

 

●ガルバリウム鋼板

ガルバリウム鋼板は、アルミニウムと亜鉛・シリコンからつくられたメッキ鋼板です。

サビに強い犠牲防食作用を持ち、屋根だけでなく外壁の材料としても利用されています。

軽くてサビや色褪せに強く、耐久年数も約25~30年といわれています。

ただし金属特有のデメリットがあり、軽量で薄いため他の屋根材に比べ防音性が劣ります。

 

この他にも様々な屋根葺材がありますので、機能面や耐久性に優れたものを選ぶようにしましょう。

 

 

5.雨漏りを防ぐためのポイント

屋根において最も困るトラブルが「雨漏り」です。

雨が建物の中に侵入すると生活が不快になるだけではありません。家を支える大切な柱や壁などが腐食し、建物自体の寿命を大幅に縮めてしまいます。

頻繁に確認することが難しい場所だけに、漏水対策に優れた屋根をつくらなければなりません。

 

一般的な住宅の屋根は、大きく分けると4つの層に分かれています。

一番上が「屋根葺材」で、その下に「防水層(ルーフィング)」、「下地(野地板)」「骨組み(垂木)」という構成です。

屋根葺材が破損してもすぐに雨漏りに直結するわけではありませんが、長期間放置すると防水層を痛め、結果として雨漏りの原因に繋がります。

屋根は屋根葺材によって覆われていますが、巨大なビニールシートのように1枚ものではなく、いくつもの材料が重なって構成されています。

そのため、台風のような暴風を伴う雨の場合は真横や下から雨が侵入することがあります。

屋根葺材を貫通した雨を防ぐのが「防水紙」の役割です。

雨漏り防止のためには表面の屋根葺材だけでなく、この防水紙もしっかりとした耐久性を持つものを選定しておかなければなりません。

 

また、屋根の形状が複雑になるほど雨漏りのリスクが高まります。

「取り合い」と呼ばれる接合部分が少ないほど雨漏りのリスクは少なくなります。

 

 

6.まとめ

普段から日差しや風雨、積雪に耐え、火事や地震の非常時には大切な生命・財産を守ってくれる屋根。

屋根は過酷な条件に耐えつつ様々な機能や役割を担っています。

気軽に点検できる場所ではないだけに、家づくりを行う場合は最初からしっかりとした形状や材料を選定しなければなりません。屋根葺材だけでなく、防水紙や下地まで長期間安心してつかえることが大切です。

設計者と相談しながら最適なものを採用するようにしましょう。