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切磋琢磨

2020.12.03
カテゴリ:

金属屋根は「横」か「縦」か

こんにちは、扇建築工房の井口慎弥です。

屋根材には瓦・金属・スレート・セメント瓦などいろいろあります。

このうち金属屋根は
幅が50センチ前後の長い1枚の金属板を屋根にのせていくのですが

のせる向きにより大きく分けると
横長に張っていく「横葺き(よこぶき)」
縦長に張っていく「竪葺き(たてぶき)」

どちらかを選ぶことになります。
(細かくは横葺きにもいろいろ、縦葺きにもいろいろ張り方があります)


「竪葺き(たてぶき)」

「竪葺き」は、正面から見るとこのように縦にラインが入って見える屋根のつくり方です。

幅50cm前後の1枚の金属板を縦長方向に張り
板と板の継ぎ目は折りたたんだり、別の部品でかぶせ物をしたりして
全体を1枚の屋根につなげます。

見ての通り、
雨が上から下まで流れてくるライン上には、途中に継ぎ目がありません。
継ぎ目は雨の流れの抵抗となったり、防水の弱点となったりするので
それが流れ方向にない「竪葺き」は、防水性が非常に高いのが特徴です。

雨を防ぐことが屋根に求められる一番の役割ですから
基本は「竪葺き」と考えても良いでしょう。

見た目も非常にシンプルで金属の屋根の特徴が良く表れています。

屋根の角のところは
「隅棟(すみむね)」というかぶせ物をして仕上げます。


「横葺き(よこぶき)」

「横葺き」は、正面から見るとこのように横に細かくラインが見える屋根のつくり方です。

継ぎ目は板と板をかみ合わせるようにして全体を一枚につなげます。

雨が上から下まで流れてくる道中、横の継ぎ目を何回も乗り越えることになります。
継ぎ目には小さいながらも段差があり、雨の流れの抵抗となって
「竪葺き」に比べると雨が流れにくくなります。

そこで、屋根をあんまり平らにしないで
ある程度の角度をつけ
雨が段差の抵抗も乗り越えて問題なく流れるように設計します。

また「横葺き」は、「隅棟」を使わないで、屋根の角ををすっきりとつくることができます。

この角のつくり方を「差棟(さしむね)」といい
そうでないつくり方に比べ、見えないところの部品や施工手間がかかるため費用がかかるものの
たいへんすっきりと美しく仕上がります。
これは「横葺き」ならではの特徴です。


(出典:日本建築学会 編・著『構造用教材』1985年)

このような寄棟(よせむね)・方形(ほうぎょう)といった屋根の角が多い家や
屋根の角が正面に良く目立って見えてくる場合は
「横葺き」+「差棟」はおすすめです。

井口慎弥
扇建築工房
iguchi@ougi.jp