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切磋琢磨

2020.05.26
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「軒の出」と「屋根の面積」

こんにちは、扇建築工房の井口慎弥です。


ここの長さを「軒の出(のきので)」といい
これが長いことを「軒が深い(のきがふかい)」といいます。

ところでこの軒の出の違いによって屋根の面積はどれくらい違うと思いますか。

「軒の出が0」のピンクの屋根
「軒の出が1.2m」の水色の屋根

この絵の例で計算してみたところ
水色は、ピンクの1.7倍の面積となりました。2倍まではいかないけど1.5倍では済まない。

ということは屋根にかかっている費用も単純に1.7倍。
屋根は屋根ふき材、通気層、防水、断熱・・と何層にもなっているのでもともと費用がかかる部分なだけに、コストアップ分が大きいのです。

反対に軒を短くすれば、同じ建坪の家でもぐーんと費用を抑えられるということになります。

しかし言い切ってしまえば住宅の中で、費用掛けただけの価値が一番あるのはここ。
一番削ってはいけないところもここです。

雨の多い日本で、雨から建物を守って長持ちさせるのも深い軒。
日傘をさすように建物をすっぽり覆って、暑い夏を涼しくするのも深い軒。
一番気持ちいい場所だと誰もが言う「軒下空間」をつくるのも深い軒。

得られるものがものすごく大きい上に、こればっかりはあとから軒を伸ばすなんてことは簡単にできません。

これは家の形によって割合は違いますが
いわゆる建坪だけにとらわれないで、こういうところで費用が違うということ
というより

こういう掛けるべきところにしっかりと費用を掛けてつくってあるかどうか

ということをよく見ておくと検討の参考になります。

井口慎弥/扇建築工房