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スタッフブログ
切磋琢磨

2020.12.11
カテゴリ:

「平屋建て」か「二階建て」か 

 

『住まいのスタンダードは二階建て』?

建築をお考えの皆さんは、そんなイメージをお持ちではないでしょうか。

二階建ての住まいを建築する理由には、

・敷地条件により面積的な制限をうける場合

・二階部分を主な居室として活用するほうが快適な住環境が手に入る場合

などが挙げられます。

 

しかしながら世の中には、「敷地条件によらずとも、二階建ての住まいを建てる」であったり

「二階建てを前提として土地利用を考える」といった、大きな流れが存在しているのが事実です。

量産型の住宅会社で建築される一般住宅には、特にその傾向が多く見受けられます。

 

一体なぜなのか?

 

それは、時代の変化に産業の変化が追いついていないからです。

戦後の住宅産業においては、より多くの住まいをつくることが最優先事項でした。

そのため、面積あたりに要する建築コスト(俗にいう坪単価)を抑えることを重視していました。

 

面積も仕様も同じであることを前提に「平屋建て」と「二階建て」を比べれば、建築費用を小さく抑えられるのは「二階建て」に軍配が上がります。

 

これは、住まい手にとっての大きなメリットとして捉える方が多いのではないでしょうか?

そしてそれこそが、「住まいのスタンダードは二階建て」という固定観念をつくりだしたといっても過言ではありません。

 

ところが、住まいづくりが「面積あたりに要する建築コスト」という視点に偏った結果、実は住まい手の利益が失われる場合が数多く存在するのも、また事実です。

言い換えれば、「住まい手の都合」ではなく「つくり手(売り手)の都合」による住まいづくりがスタンダード化してしまったともいえるのが、現在の住宅産業の実態なのです。

 

 

平屋という選択を住まい手の視点で考えてみる

 「建築費用を小さく抑えられる」は本当か?

前述したとおり、住宅を建築する際にかかるコスト、いわゆる初期費用は、二階建ての住宅のほうが小さく抑えられます。

 

分かりやすいのは、総二階建ての建物。(一階と二階の面積が同じ建物のこと)

延床面積が同じ場合、総二階建ては平屋建てと比べ、基礎と屋根の面積が半分で済むため、その分のコストも半分で済みます。

 

そのほかにも面積あたりに要する建築コストは、上に伸びるほど小さく抑えることができる要素が多く、初期費用が割安となりそこに数百万円という値の差額が生じます。

ただし、ここまではあくまでも初期費用にのみ、焦点をあてた場合の話。

長く暮らしていくことを想定すれば、建物にはメンテナンスのための様々な維持費用がかかります。

 

健全に住み続けていくことを前提とした際の建築費用は、「イニシャル」と「ランニング」の両方、つまり「トータルコスト」を考えたときに初めて「安い」「高い」といった判断ができるわけです。

「平屋建て」と「二階建て」の違いにより特に大きく差が出る部分は外皮部分(外気に接する仕上げ部分)です。

 

下記は、『建築知識2019年9月号』にて、弊社の取材を基にした記事の抜粋です。


出典:建築知識2019年9月,P.60,エクスナレッジ

 

屋根、軒裏、雨どい、外壁、窓まわりの劣化に応じて、それを維持していくための補修工事が定期的に必要になります。

「平屋建て」は「二階建て」に比べて、軒を十分に出せばカバーできる外壁の割合が大きく、劣化が進みにくいという利点があります。

 

また、見落としがちですが、高所作業に関して言えば、樋の架け替え一つとっても、平屋建てであれば脚立でできるところが、二階建てだと足場をかける必要があるなど、間接的な工事費用にも違いが生じます。

 

いかがでしょうか?

考え方を拡げると見方が一変するため、これらのことも考慮したうえでの選択が必要になってきますね。

 

時間軸を交えると、「利用価値」はどうなるか?

二階建ての家を建てる際、一階部分にLDKや水まわりが配置され、二階部分には寝室や子供部屋が配置される場合が往々にしてあります。

ごくごく一般的に存在するこの間取り、建築当初は当然なんの問題もなく利用できる空間として用意されるはずですが、ここで一呼吸、時間軸を交えてその空間の有用性を考えてみてください。

 

住まい手が高齢化すれば、二階に用意した「寝室」の利便性は、足腰になんの不安も抱えていなかった現役時代に比べ格段に下がり、場合によっては二階へ上がることさえも困難となる時期が訪れる可能性があります。

「寝室」としての役目を終えたときの空間は、日常ではほとんど利用されない「物置部屋」と化すのが関の山でしょう。

 

また、子供たちが巣立った後、果たして「子供部屋」という名称の空間は、その後も有効に利用されるでしょうか?

 

総二階建ての延床面積40坪の家でも、有効に利用できる空間は一階の20坪分だけ、という時期が訪れた際、利用価値を発揮できる部分は、わずか半分に目減りしてしまうのです。

 

そして、新築時から住まいの役割を終えるまでの全期間のうち、本来の価値を発揮できる期間とそうでない期間、どちらの期間が大きな割合を占めますか?

皆さんが育ったご実家等は、実際にどのような状況でしょうか?

 


今回は、選択肢のひとつとして「平屋建て」をご紹介しましたが、もちろんすべての土地に対して平屋が最適とは限りません。

 

眺望、周りの環境、日当たりなど、その家の立地によって平屋がいいのか、二階建てがいいのかは変わってきます。

 

固定観念にとらわれず、長い目で見た住まいの選択。

ぜひ参考にしてみて下さいね。

 

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扇建築工房ougikenchiku

関連書籍:

建築知識2019年9月号